「魅力」について。

 

毎年、彼岸花の登場の

唐突さには驚かされます。

 

「いつのまに…」

 

お住まいの地域にも

咲きましたか。

 

私は東京の郊外、小平というところで

デザインと雑誌づくりをしています。

小平市民の憩いの場「グリーンロード」の

とあるエリアは

日々人々が手入れを惜しまない

植え込みがあります。

 

毎年そこに彼岸花が

触手のようなおしべを空へぐんと伸ばして列をつくり

さらに近くの霊園から漂う香が鼻をすり抜けていき

それはそれは、浮世離れした艶やかな世界を

作り出すのです。

 

今年も、そんな時期となりました。

 

自分はこの花を眺めるたびに

ある妖美な女性のことを思い浮かべます。

 

葉が一つもついていない茎は

そのしなやかなスタイルを。

赤さは、使い慣れたシャネルのルージュココを。

立ち姿には凛々しさと

ちょっとした不自然さを。

そして赤い色が抜けていく頃には

彼女の知られざる脆さも。

 

彼女からは人間味(ならぬ植物味)がほとんど感じられず

人を寄せ付けようとしない「陰り」があるようなのです。

 

そんなわけで、まるで対照的な自分にとって

入り込めない世界観でもあります。

 

正直コワいのです。

しかし、やっぱり見てしまうのです。

 

近寄りたい、近寄れない。

ううん、なんだろう、このもどかしさ。

 

 

*  *  *

 

 

石井ゆかりさんのエッセイのなかに

こんなことが書かれていました。

 

「魅力というのはたぶん『全部は見えていない』

『手に入らない』『はっきりわからない』というところに

生まれる力なのではないだろうか」

 

人の気持ちを両極にゆるがすものは

きっと独特の色香を放つもの、なのかもしれませんね。

 

このお花

日本では「死人花(しびとばな)」や

「幽霊花」といった見るからに縁起の

悪そうな名で呼ばれていますが

古来の人は

そんな近寄りがたさからくる畏怖を込めて

このように名付けたのでしょうか。

 

とすれば、多少眼を見張る表現であっても

頷ける気がしてきます。

 

 

*  *  *

 

 

今年も、この曼珠沙華の並木道を

何度も歩きたいと思っています。

 

遠くから不自然なほどに美しい彼女を

チラと見るときのような

戸惑いと好奇心をたずさえつつ…(ソワソワ…)

 

 

 

追:ちなみに、仏教では天界の花とされているそうですね。

 

 

 

 

 

by londel