祈りのフレーズ

2016.03.11 Friday



薬局にて、思わずシャッターを切りました。



ちなみに落とし物のメモには、「おとしものです。持ち主の元に戻りますように。。。」の文字。

この「…でありますように」という表現を見て、今読み進めている作品のとあるシチュエーションを思い出していました。登場人物たちは各場面において、この祈りのフレーズを挨拶の如く使うのです。

「あなたが今日もしあわせに過ごせますように」
「どうかご無事でありますように」
または「安らかでありますように」というように。

この国においても、結びの言葉などで親しまれているこれら表現ですが、言ってしまえば祈りは只の祈りに過ぎません。効果は誰にも分かりませんし、人付き合いにおいてその場をきりぬける為の常套句として使われることもしばしばあるかと思います。

それでも、この呼びかけのように、形なき願いに込められた何かに体温の上昇を感じていました。いまもどこかで流れているであろう、静かな祈りのひとときを想像し、もし今笑顔であるとするならば、それは祈りの効果よるものではなく、そのひとときによるものかもしれません。そのように想像の翼を広げることも、実におもしろいことです。

日常の一コマに拍手。早く持ち主の元に戻るよう、重ねて願うばかりです。

by londel

謎のメモを解読する日記

2016.03.09 Wednesday




図書館で借りたライプニッツの参考書を読んでいたとき、はらりはらりとこのようなメモが落ちてきた。



謎の数字があちこちに記されており、なんとも興味深い。しかも何かのチラシの裏というエコメモ。おそらく、前回借りた人がしおり代わりにはさんだものだろうか。解読したい気持ちに襲われた。

ちなみにこのとき、ライプニッツの世界観にどっぷり浸かっていたこともあり、思わずメモに深い意味合いがあるように思われた。(本誌のテーマは「なぜ私は世界に一人しかいないのか」)誰かが本誌の要点を​必死に書き留めている様子が浮かんだ。あるいは、次に読む人のために彼が残した指南かもしれない…
好奇心をふくらませて、目を凝らした。





「26金 554」




日付、26日、金曜日という意味だろうか。またその次の数字はページの名前とも思えるが…こんな分厚い本ではない。丸文字のうえに字が小さく走り書きのため、なかなか解読がむずかしい。さらに読み進める。








「(2人)麻婆 898」

…ま、まーぼ?
あの、中華料理の美味しいやつ?




「22月 101 豚梅おろしやき 1181」

…!?




「24水 310 うなたまどん 885」

…!!??




「冷凍みかん1.2kg ところ天」
……………。






以上ライブニッツと関係なし。現実に引き戻されたところで、解読は終了。おそらく宅配コープかなんかのメモ書きと見た。不覚にも「うなたまどん」を見たときは、その響きの可愛らしさに吹き出しましたけれど。ちなみに響きの可愛さと言えば、今まで「うま煮」がダントツだったのですが、「うなたまどん」もなかなか…

なんてどうでも良いのですが…笑

多分この方は、栞代わりに手元にあったこちらのメモをはさんだのでしょう。ご夫婦で宅食を選ぶ様子が今度は浮かんできました。というか、ごめんなさい。裏を返したらコープじゃなくて、ヨシケイでした。(どっちでもいいわい)



結局内容が何であれ1/fの存在を感じるのは確かなので、このメモはありがたく当編集部で預からせていただくことにします。


by londel

編集部では最近、余り野菜でケークサレを一気に焼いて、作業の小腹を満たすすることもしばしばです。簡単だし、春にはいいですからオススメです。また更新します♪



 

[本日の1/f劇場]vol.1 カラオケボックス

2016.02.20 Saturday




londel blog限定記事
「本日の1/f劇場」 





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episode.1「オールドカラオケボックス」




アトリエ近く、とあるビルの2階に小さなカラオケボックスがある。

前から気になっていたこともあり、この日は打ち合わせの合間、気分転換に行ってみることにした。
外見から予想していたとおり館内は相当寂れていて、
何度も塗り足したであろう壁は所々が剥がれおち、床はガタガタしている。
受付には若い女性の店員が立っていた。

「何名様ですか」
「1人です。30分で」
「機種は」
「どれでもいいです。ワンドリンクですか」
「無料のドリンクバーになります。ご自由にお使いください。廊下にあるので」

そう言うと、店員は廊下に設置されたドリンクディスペンサーを指差した。
こちらも相当古かった。






ドリンクバーで、とりあえず飲んでも大丈夫そうな白湯を選ぶ。
昼間なのになぜか薄暗い館内に不安を感じつつ、伝票を片手に指定の号室を探す。

「206…」

部屋を見つけ、今にも取れそうなドアノブをひねる。
すると、真っ暗で、だだっ広い約20畳の大宴会用部屋が目の前に出現した。
古い室内に染み付いたタバコの香りが、一気に鼻を刺激する。

「え?」

もう一度部屋を出て、室内番号を確認するが、伝票と同じだった。
“ヒトカラ”はあらゆる場所でやってきてはいたが、
こんな大広間に1人通されるのは初めてだった。
あっけにとられ、思わず片手に持っていた白湯を足元にこぼした。







 

カラオケで30分など一瞬と同然である。
とりあえず、数曲ある十八番のナンバーを次々に送信し、一通り歌った。
色々と年季の入ったこの店だが、マイクの調子もディスプレイも悪くない。
そのおかげで下手な声が室内によく響いた。
肝心な部分がしっかりしているなら、それでよかった。

4曲目あたりからは、なぜかこの空間をレトロに感じ始めていた。
かつてあったであろう金曜日の夜を想像する。
ここで大勢の人が酒を飲み、タバコをふかし、即席のご馳走を食べてどんちゃん騒ぎをしている。
その場を仕切る者、マイクにありつくこともなく下座で身を固める者の幻影も見えた。
そんな場所を今、自分は自由に使っている。
どんなに踊っても、いつもより上手く歌えても、余計な口出しもなければ評価もない。
そんな当たり前のことが、当たり前過ぎて笑いが込み上げる。
そんなとき、ディスプレイにこんな歌詞が流れた。

 



「勘違いしないでね

別にかなしくはないのさ


抱き合せなんだろう

孤独と自由はいつでも-------------------」


the pillows 「ストレンジカメレオン」

ヒトカラ後ならではのすっきりとした心持ちで、会計に向かう。
卓上ベルを鳴らすが一向に店員が来ない。
料金超過になってはまずいので、もう一度押すが反応はない。
結局6回押したところで例の若い店員さんが走ってきた。

「はあ…すみません。ええと…360円になります」

疲れた顔で可愛らしい笑顔をみせた。
この店の店員は彼女しかいないらしかった。

「ありがとうございました。またお越しください」








出口のドアノブをひねって外に出たと思うと、
そこには暗がりで男性が1人、“粉雪”を熱唱していた。
出口ではなく、別の個室に入ってしまったのだ。
振り向いた彼の顔は、驚いてはいたが歌は歌いつづけている。
私は謝罪し、すぐドアを閉めた。
館内の全てのドアは個室も出口も同じ造りをしていてたのだった。



 

彼の部屋は私が使用した宴会場の真隣の部屋で、そこも大きな宴会場だった。


 



fin.






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by londel







 

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