日々のなかで

「これだ!」と思って突き進んできた途中で

思いもよらぬ展開が起こり

膝を崩してしまうことってやっぱりある。

 

こんなとき、仕方ないなと思いつつも

後味のわるい諦めの気持ちが広がる。

選択が間違っていたんだと悔やみがちにもなる。

 

けれども、それはただできごとの断片であって

一概に「ダメなこと」と一括りにできない…

それを言葉化できるようになったのは

遅ればせながら、ここ最近のこと。

思い返せば、あることが一つのきっかけになった。

 

今日はちょっとそんな気づきを

綴ってみたい。

 

 

*   *   *

 

 

それは昨年の8月のこと。

現地に行って取材し、撮影を行ったのにもかかわらず

お蔵入り(ボツ)になってしまった記事があった。

 

長野県・昼神での星空撮影の特集だ。

 

星空日本一と名高いこの地での取材は

最新号の紙面堂々と飾る予定だったけれど

とあることで丸々掲載できなくなった。

 

その理由は、(言うまでもないのだけれど)

現地で星が1つも撮影できなかったからである。

 

 

*   *   *

 

 

初夏。

vol.5の方向性が「夜の物語」に決まったあと

企画づくりで相談に乗っていただいている

デザイナーさんに「星が撮りたいです」と提案。

「それなら昼神がおすすめだよ」と

アドバイスをいただいた。

 

 

早速、昼神のことを調べはじめると

すっかり土地の魅力にハマってしまった。

次の週にはホテルと電車のチケットと

星空の観望会をスピード予約。

「これしかない!」という

根拠のない自信しかなかった。

 

慣れない夜空撮影のため、

数ヶ月前からカメラの練習やら

シュミレーションやらでアタフタしていたし

持ち込む機材も多いので、段取りの難易度も

高かったけど、コツを掴むのは楽しいもの。

きっと良い画が撮れると胸を膨らませて

あずさに飛び乗った。

 

 

*   *   *

 

 

 

長野県阿智村、昼神。

標高1400mの22時は、夏でもしっかり寒い。

 

露で冷えた芝生の上に、三脚を広げて

カメラなど諸々の設定を済ませ

体育座りでその瞬間をじっと待つ。

 

「それでは、いきますよ〜!」

 

しばらくすると観望会のスタッフが

消灯のカウントダウンを大声で唱え始めた。

 

隣のファミリーは子どもは眠りこけ

お父さんが一番はしゃいでいる。

となりのカップル手を繋いで

肩を寄せ合って目を凝らしている。

天体マニアの人たちは見たこともない

長さの望遠カメラを空高く突き出し

目をくしゃっとさせカメラを覗く。

 

 

「それでは、消灯まで 3、2、1…!」

 

 

山の灯りが全部消えたとき、

観望会場内は、感動とは程遠い

重い沈黙が漂ったーーー。。

 

そして、同時にわたしの心の中では

「ちゅどーん」という謎の擬音が鳴った。(w

 

事前の写真で見た、あの天の河は

夜空に一滴も流れていない。

東京で鑑賞できる星1つさえ

見つけることができなかった。

 

度数高めの銀縁メガネを外し、

カメラを覗き、そして画面から顔を

遠ざけて空を仰ぐことを繰り返し

俊速の瞬きを20回くらいしたと思う。

 

ただただ、目の前に広がるのは

墨を塗りつぶしたみたいな黒。

 

 

*   *   *

 

 

山の天気は移ろいやすい。

わたしの班の時間帯は、山に霧が覆い

雨が降りはじめてしまった時間帯だったのだ。

(ちなみに、一つ前の第一班は満点の星空

天の川を心ゆくまで楽しんだそう。

ほんの2時間前のことだった。)

 

「なんで…」

 

後味の苦い後悔が

ひょっこり顔を出しそうになる。

 

そんな中、なぜだろう。

ふと、ある漁師のことを思い出したのだ。

(ほんとうになんでだろう)

その人は、いつぞやのドキュメンタリー番組で

密着取材されていたマグロ一本釣り名人。

 

その漁師さんが、自慢の仕掛けをこしらえ

毎日海原に船を漕ぎ出すシーンが目に焼き付いていた。

 

用いているのは、一本釣りという古風な漁法のため

波が読めない時や不漁の時期などは

半年間も釣れないこともあると語っていた。

 

それでも「今日こそは」と願いを込めて

自身の考案した自慢の(モザイクがかかった)仕掛けを準備して

次の日になれば船を漕ぎ出すそのおじさん。

彼の背中は広くて

「かっこいいなあ〜」と惚れ惚れした。

 

 

*   *   *

 

 

「自然を相手にすること=みまもること」

 

月並みな表現すぎるけれども

自分はこの日、そのことのほんの小さな片鱗を味わった。

 

ひとつの結果であり“悪いこと”ではない。

もっと視点を変えろというサインかもしれない。

とにかく何かをすぐにラベルを貼るのではなくて

あの漁師さんみたいに、

このときをみまもることをしてみよう。

 

そんなことを考えていたら意外と心が軽くなり

夜中12時の意識朦朧とする中、

ゴンドラをあっけらかんと降りた。

 

次の日は昼神観光を思う存分楽しむことに

シフトして大正解だった。

 

 

 

 

 

 

(そのとき食べたあんみつ。

 

 

(しかしっ…このとき、標高1400mの会場に

お気に入り銀縁メガネを置き去りにしてしまったことに

ホテルに戻ってから気づく。

こっちの方が、かなりコタえた悲しい。。。)

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

その後、この話はネタとなる。

色々なところで話すうちに内容が定型化し

完全なるオチが決まり、(話術を取得)

あたたかい人々がお笑い話として

聞いてくれるようになる。

 

中でも、驚いたのは

先日ご紹介した陶芸作家の方の工房が

昼神が近く、星空が美しいことが分かったこと。

結果、秋の澄み切った空の下

カシオペア座を無事撮影

掲載することになった。

 

 

あの時、昼神できちんと撮影していたら

この星座は撮影予定には入らなかっただろう。

 

想定外のことにもちゃんと続きはあった。

 

あれから「なんでやねん」とつぶやくとき、

マグロ一本釣り漁師が仕掛けを

シャッシャとこしらえる背中が見える。

 

せっかく小ネタになったこのエピソード。

今回、こうしてお蔵入り記事の追悼文として

この機会に成仏させてあげたいと思った次第だ。

 

 

 

追伸

 

昼神の写真は、

「アルセーニー・タルコフスキー」の詩文のページに

ちょこっと掲載しています。良かったら探してみてくださいねニコ

 

 

 

by londel

 

 

 


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