Hibiの妙味。

 

器の修復技法「金継ぎ」のように、欠けている部分こそが

新しい見どころをつくる魅惑的なポケットであったりするから

つくづく「うつくしさ」とは隠れんぼ好きだと思う。

 

先日、国立のたましん歴史・美術館で開催中の

「東洋古陶磁展〜造形と意匠〜」でそんなことを考えていた。

 

三彩花菱の文様が美しい小さな枕や、名馬の俑、

楊貴妃のような夫人の置物が並ぶ展示室をゆっくりと歩いていると

ある壺の前でピタリと足が止まる。

 

青い艶を帯びた青磁の表面には無数の爛劵哭瓩入っていたからだった。

いや、興味を惹いたというのは、そのヒビ入り茶碗が我が家にもあったからなのだ。

 

今年に入ってから、堺に住む伯父が、大正生まれの遠い親戚のおばあさんから、古い茶器を一式受け継いだ。それは渋々のトリヒキだった。実のところ伯父はおばあさんを気遣ったのであって、茶自体にはまったく興味がなかったという。(「利休ゆかりの地に長年住んでいるのに」とつっつくと、口を尖らす茶目っ気たっぷりの伯父は、長年野菜作りに夢中。)

 

やがて茶器は伯父の家で完全に行き場をなくした。

そんな時のことだった、出張の合間に堺名物のケシ餅を食べにやってきた私が、この茶器と出合うことになったのは。

というわけで「これらは僕より少しはティタイムが好きな人間の側にいたほうが居心地がいいでしょ」ということに話がまとまり、我が家に引き取られることとなった。(茶道を嗜む人間の家には、なかなか辿り着けない運命にある器たちらしい。)

 

その中に、このヒビ入り茶碗が一皿混じっていた。

乳白色の素地に、薄い灰色の線が無数にぶつかっては張り巡らされた抹茶茶腕だ。

半年間、その模様に興味津々だった。

 

私はずっとそれを爛劵咾覆蕕魅劵哭瓩世隼廚辰討い

一服するたび、その不自然さに首をかしげた。

だって、ヒビとは本来、予想外に発生するものであり、

不規則なものであり、度々「失敗」を示すしるしだったのではないのか。

 

…それにしても、まるで犲最坿境瓩里覆ど垰弋弔糞砧である。

全体に灰色の線がまんべんなく行き渡った立派なテキスタイル。

どうやったらこんなものが出来上がるんだろう。

ますます謎は深まるばかり。

 

「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる立派な陶器模様の一つであることを

展示会で知った初心者の私は、膝をポンと打つ。

 

焼きものの焼成後の冷却時に、釉薬と素地の収縮率の差によって生じる釉薬の模様なのだそうだ。

ふむふむとキャプションに目を走らせるうちに、都合良くも、我が家の茶碗に一刻も早く触れたくなってくるではないか。

どんどん灰色の線上が魅惑的な迷路のようにも見えなくもないではないか。

 

貫入の皿の楽しみ方の一つは、亀裂部分に色素が染み込んでいくことらしい。

日々によって生まれるhibiの楽しみ…なかなか粋な気がする。

 

「欠けている部分こそが

新しい見どころをつくる魅惑的なポケット」

 

かくれんぼは永遠に続きそう、と思いながら

茶碗を両手で包み込む、暮秋の夜は今日も長い…ー。

 

12/9まで開催中だそうです。

たましん歴史・美術館はいつも展示が充実していて

毎回の企画を密かに楽しみにしています。おすすめですっ。

 

*  *  *

 

 

 

そんなわけで、今日のおやつは輪島の大判焼き。

「わしま、わしま」はクリーム入りの証。

 

餡よ、ごめんね!今私はハイカラな気分なのだよ。

 

 

by londel

コメント

はじめまして。最近のいち読者のlmと申します。
「東洋古陶磁展」、たましんさんの前を通るたびに鮮やかなポスターに心惹かれていたのですが、この度、londelさんの愉しい記事に背中を押して頂く形で、先日観賞して参りました。

私も数年愛用していた陶酒器の底にhibiのようなurokoのような、味わい深い模様が入ってきまして、これは、、と腑に落ちぬままに用いていたのですが("ヒビならぬヒビ"とはまさに言い得て妙!)、
おそらくは「貫入」の一種と思われます(あるいは、私のはまったきヒビかもしれませんが……)。

ともあれ、おかげさまでhibi模様の謎が賦に落ち、展示でも素敵な作品と出会うことができました。
londelさん、ありがとうございました。1/f、次号もとても楽しみにしています。

  • lm
  • 2018/11/17 22:41

Im さま

コメントありがとうござます。たましんさんの展示にお出かけになられたとのこと!なんだか、ホッとする展示ですよね。
編集人の個人的なつぶやき更新になってしまったにもかかわらず…ここにもhibi仲間の方がいらして、うれしい限りです。

きまぐれ更新のブログではありますが、ぜひまたいらしてくださいませ。

編集人

  • londel
  • 2018/11/19 23:50