アールグレイの湯気越しに馳せるロンドン。

 

ソーサーからカップを持ち上げた時、立ち上る湯気のかんばしさから、いつものとは似て非なる一杯であることを鼻先に確信しつつ、口をつける。「アールグレイはこういうものよ」と教え込まされるような説得力のあるベルガモットオイルの香り。ガツンときた。しっかりしていながらも決してウソっぽくないシトラスの爽快感と、ほのかな苦みが後を引く。

 

余韻が消えないうちに、ソーサーにひっかけておいたショートブレットをひとかじり。ザクっときめの粗そうな音を立てたかと思えば、たちまち香ばしさがグラデーションのように移り変わる。ベルギーチョコチップのあとに、オレンジフレーバー。最後にショートニングでもない、マーガリンでもない、バターの豊かさが広がっていき、なめらかな口溶けであとかたもなく消え去ってしまった。あまりに潔い幕引きに軽く薄笑いを浮かべ、思わず独り言をもらす。

「今日は柑橘類が共鳴したってわけか…」(黙)

 

…と茶番はここまでにして。(笑)いやあ、でもほんとうにおいしくて。ペアリングが上手くいった日ほど、なんだか甘太朗的(『さぼリーマン飴谷甘太朗』という漫画の主人公)コスモロジーなレビューになってしまい、本家に申し訳なくなります。

 

 

 

どちらも、先週、gallery re.tailさんで開催されていた「冬の小さな英国展」で手にとったイギリスもの。ショートブレッドはスコットランドの老舗ベーカリー、リーズ・オブ・ケイスネスの新作「チョコチップ&オレンジ」。ショートブレッドのふるさとであるスコットランドで1966年に創業したメーカーで、栄誉な賞を受賞していることも、丁寧に紹介していただいた。

 

ブルーのボックスに一目惚れしたティーは、ロンドンで'07年にオープンした「カメリアティーハウス」のアールグレイ。ハーブティーや薬草学に精通する姉、ティーソムリエの弟という兄弟でプロデュースされた、世界中で知られているティーハウス。

日本語版サイトには「昔ながらのティールームが少なくなってきたロンドンで、英国の伝統的なティールームと、紅茶文化を復活させたい」という姉ルブナさんのオープンにまつわる熱い想いが綴られていた。

 

ロンドンでティー文化の復興活動が起っていることを知ったのは、ごく最近になってからだった。雑誌の記事を読んだのだ。現在はCOSTAのような大手コーヒーチェーンが圧倒的に多く、街に根付いた昔ながらのティールームが少なくなっている。危機感を抱いた紅茶を愛する人々が、ロンドンの茶史を広めるための特別な協会を立ち上げるほどだ、と。「イギリスの喫茶? アフタヌーンティー とかスコーンでしょ、紅茶、貴族、それと銀器…」なんていうわたしのようなミーハー外国人のイメージというのは、もはや外側から見たごく一面に過ぎないことを知る。

 

 

そういえば、この前、丸の内の一保堂で煎茶体験をした時に、欧米人のカップルが紙コップでサーブされた煎茶を喫しながら、抹茶や茶器を真剣に選んでいた。そのお二人を見て、なんだか胸がじんと暖かくなるのを感じた。私に見えていないものを、遠くに住んでいるあなたには見えているんじゃないかと。恥ずかしくて、声をかけられなかったことがココロにひっかかっている今日も、あらゆる喫茶文化が世界中をめぐっているのね。

 

とにもかくにも、これらイギリスのティー文化のちょっぴり満喫できるような茶菓によって、読書の集中度も改まった気がします。(おやつで集中度が左右される奴がここに)

 

by Kei

 

 

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