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先日、T-siteにて懐かしい商品をみつけた。

「hibi」というアロマ線香。香りは白檀。

線香自体がこの形なので、マッチの要領で火をつけて

専用の不燃性マットに置けば、約10分間の香りを

楽しむことができる、この手軽さである。

忙しい、灰はあとしまつがタイヘン、器具がない

けれども香りは楽しみたいとおもう

自分のような欲張りな現代人にとっては

画期的なアイテムに思える。

 

 

 

 

 

数年前、ありがたいご縁で日本の香文化に

触れさせていただく機会があって、その中で白檀を知り

以来この香りに手が伸びる。

 

さて。

先日久しぶりに「hibi」を見つけたとき

2年前に吉祥寺にあるアロマ専門店の店主に

「じぶんの香りをさがした方がいい」と言われたことを

思い出した。

 

親類の誕生日にアロマキャンドルをプレゼントしたくて

吉祥寺のはずれにある香りの専門店に

行ったときのことである。

 

*    *   *

 

あの薄暗い店内に入った途端

鼻が驚いたことを覚えている。

東南アジア風の店内には、古今東西のいろいろな香りが

満ち溢れていて、甘かったり、スパイシーだったり、

お寺っぽい感じなどが全てごちゃ混ぜになった異空間だった。

 

「何かお探しですか?」

あまりの濛濛たる空間に立ちくらみがしてきたところで

店主のおじさんが奥からひょっこりと出たきた。

黒いエプロンをまとった60代くらいの茶目っ気のあるおじさん。

「でしょ〜?だよね〜?」

二言話しただけで彼の語尾がタメ口になっていたのは

思わず笑った。

 

店内を見回すとアロマキャンドル以外にも

オーガニックの精油や、東南アジアで使われている香りを

楽しむための不思議な器具、日本の線香など

香りに関するものなら何でも売っているらしかった。

 

「ねえ、これ面白くない?」

と言いながら、いつの間にかおじさんは

アルコールランプ式のアロマを実演し始めたりとか

アジアと香り器具についての関わりとか

精油の産地について楽しそうに語り始めた。

 

わたしはキャンドルを買いに来たのだけど。

しかし、おじさんが色々に点火するので

話は伸び、既に飽和した店内に香りが加わっていく。

アジアの蒸し暑さと人間じみた臭気と

それをかき消そうとする猛烈な香料が混ざり合うような

いつしかのハノイの夕方を思い出し、

気が遠くなった。

 

彼の持っている高級商品は

うん万円するものであり特に自分の好みでもない。

香りよりおじさんの香りに対する飽くなき情熱の方が

気になりはじめ、ペンとメモ帳を

準備しかけたほどだ。

 

一通り、彼の熱が冷めたところで

私が一番隅にあった小さな白檀の箱を手に取ったとき

彼は微笑んで「あんたおもしろいね」と言った。

デザインも可愛くて、カラフルで長くて

しっかりした香りのする線香より

このこじんまりさと、木の香りの方が

日常的だった。

 

「そう、じぶんの香りをみつけるといいよ」とおじさん。

「それを嗅いだら、じぶんに戻っていける的なものですか?」

「そう。郷愁をさそうようなものかな」

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

なかなか向上の見られない英語学習の中で

「I can sleep well if i meditate before going to bed.」

という英文を見つけた夜に

白檀の香りをたき、しばし目を閉じた。

 

それなのに、瞼の裏にうつるのは

あの薄暗い空間で、香りに対する飽くなき興味に満ちた

表情を浮かべて

慣れた手つきでマッチを擦る

おじさんの面影なのである。

 

 

 

 

 

 

by londel


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