自由詩「ばあちゃん、ひさしぶり」

 

 

 

いやあ 久しぶりじゃないの

一瞬誰か分からなかったわ

なかなか見えないのよ

このメガネじゃないと

そろそろあたしも

おむかえが近いんだろうね

かんべんして なんてねえ

 

それにしてもなんだい

そんなスースーしたカッコ

そんな魚のアミみたいなんを

巻きつけるのが

流行りかい 世も末かえ

手足冷やしたらいかんよ女は

「頭寒足熱」を知らんのか

いやあ あたしらがそん頃は

そんなん カッコ悪かったろうね

大人もそう言わんの? やあねえ

これだから

今のオトナもワカモンも

 

あ それかい 土用干しだよ

家でせんのかい 土用干し

知らんの はあ呆れた

これだから 都会人はまったく

まあいい

漬けたら瓶に詰めとくからね

帰る前に取りに来るといいわ

塩? あたしゃパアセンテエジ高めよ毎年

譲れないんだよそれは

いいんだよその方が絶対

周りは血圧血圧やかましいけど

おてんとさまがくれたタベモンよ

ダメにしないことが一番だろう

まったく漬けもんに限らず

何事も塩加減が大事よ

なんや塩梅とか言う熟語があるし

ほら確か今の朝ドラの

ヒロインも言ってたやつ

「これ良いアンバイじゃ」なんてね

なんだ、よう見んの?あんた

まああたしも

時計がわりにエヌエチケ

つけてるようなもんだけど

 

なんだい?ああ あの音ね

魚屋のワゴンだね 

そうなんだよ毎日こんくらいに

あのワゴン引っ張ってくんだよ

朝獲れたピチピチのを

氷敷き詰めたスチロールの上に

どっさりと積んでね

それにしてもなんだいあの魚屋は

この前息子に新鮮なの送るゆうて

魚屋からクロネコに

頼んでもらったんだけど

って あんたそりゃそうだよ

ほらあたしの腰も

こんなアカエビのように丸まってるし

魚がたんと入った

つめてえスチロール

なんかかかえて

伝票なんかも用意して

クロネコさんのところに

かついでいくなんてようしないわ

そんで魚屋に頼んだけど

なんや時間を指定する欄を

間違えたとかなんかで

後日あたしが息子に

怒られちゃったことがあってね

おふくろ困るよって

平日の昼間にマナガツオ送らんといてって

せっかく新鮮なやつ

送ってやったってのにねえ

嫌な魚屋じゃないんだけどね

ちょっとたまにネジが

しまってないことがあるんだなあのご主人

 

いや それが

マナガツオ入った時だったのよ

干し海老なんかも詰めてもら…

ん? そうだよこの時期は

マナガツオが獲れるんだここら辺は

そんなことも知らんかったのか

いいよ こんどあんたにも

送ってあげるからね

 

調理方法? そんなんぶつ切りにして

漬け焼きにすりゃいいだろ

もしかしてそんなんも

できないんじゃ…ああよかった

それはちゃんとやるんだね

まあこのくらいは当たり前よ

できなかったら送りゃせんよ

何事も苦労が

足りないようじゃいかんよ

おてんとさまが両目かっぴらいて

あたしらのこと見てるからね

しんだじいちゃんが

毎日言ってたことだよ

ってやあねえすっかりあたしばっかり

しゃべっちまったねえ

それであんたいったい何の用だい?

 

 

 

 

 

 

「ばあちゃん、ひさしぶり」by Kei

 

 

 

 

なんだ、このばあさん。笑

書きながら吹き出してしまった。方言が錯綜してて。

 

先週、祖母と電話で話したことが筆を取ったきっかけなのは確かだけど、このばあさん祖母でないことは確かだ。

こんなマシンガントークしないし、岡山弁だから「じゃろ」とかが文末多くなるはずだし。笑

 

あたしの心象風景にずっと佇んでいて欲しい夏のばあさんなのかしらん。

 

しっかし二十四節気は今日から「立秋」なんて。

盛夏の編集室。例年通り七十二候「涼風至」の爽やかさとは裏腹の東京で過ごすことになりました。マリーナ・ショウを聴きながら、手を動かす。

 

みなさまも、みなさまだけのすてきなおばあさまを心に、夏をお過ごしください。

 

by Kei